※この記事は、実際の子育て体験から「発達グレー×不登校対応のリアル」を描くシリーズです。制度への問題意識と、親としての現実の葛藤、その両方を綴っています。
小学校ではフォローできていた息子が、中学で一気に“困りごと”を抱え、医療的支援に出会うまでの記録です。
■「学校に行かない=問題」ではないと思っていた
息子が完全不登校になってしばらく——
私は、無理に登校を促すよりも、本人が落ち着ける生活を探すほうが大事だと感じていました。
だから、週の半分は昼夜逆転しながらも、
息子が外に出られる日は一緒にトランポリンに行ったり、
自然観察をしに出かけたり。
「何か好きなこと、やりたいことを見つけられたらいいな」
と思って、いろいろと“体験の種”をまくような毎日でした。
■ある日、息子が言った「僕、病気なのかな…」
そんな中、昼夜逆転のサイクルがまったく戻らなくなったある日。
息子がふと、こんなことを言ったのです。
「僕さ、起立性とかの病気かなあ。昼間はどんなに寝ても眠いのに、夜になると眠れないんだよね」
私は正直、「これは言い訳かも」と思ってしまいました。
実際、彼の生活をずっと見てきていて、昼夜逆転はゲームや動画に没頭した結果であり、生活リズムが狂っている自覚もある。
それを「病気のせい」にしたい気持ちもあるんだろうな、と。
でも、それでもよかったんです。
これは息子が初めて自分の状態を「困っている」と言葉にした瞬間だったから。
■“困っている”なら、一緒に考えよう——児童精神科へ
私はすぐに児童精神科への受診を決めました。
「言い訳でもいい。自分から“助けて”と言ってくれた」——
それだけで一歩前進だと思ったのです。
そこでもまた、とても良い先生に出会うことができました。
■先生の見立て——「この子の特性に、今の環境が合っていないだけ」
児童精神科の先生は、息子の様子を見てこう言いました。
「発達の特性がありますね。
中学に入って環境が大きく変わったことで、それが生活のしづらさとして出てきたのだと思います。
家庭やお母さんの職場など“居場所”がある場所では落ち着けるけれど、学校ではそれが奪われる。それが学校に行きづらい理由です」
そして、息子のゲームや動画への没頭についてもこう語ってくれました。
「これは“逃避”ではなく、本人の“特性”にマッチしてしまっているだけです」
■分析:なぜ“オンラインにハマる”のか?——WISC結果から
実際、息子のWISC-Ⅳ(発達検査)では、知覚推理(PRI)やワーキングメモリー(WMI)が高く、「集中して没頭する特性」が見えていました。
こうした子は、以下のような理由でオンラインにハマりやすいと考えられます。
「集中・没頭しやすい」特性とオンラインの関係
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知覚推理(PRI)が高い →
視覚的情報の処理に強く、ゲームや動画の映像変化に正確に反応でき、成果を出しやすい -
ワーキングメモリー(WMI)が高い →
複雑なルールや手順もスムーズに処理でき、チャットや攻略も得意 → オンライン世界で“活躍できる場”を感じやすい
■なぜ現実の学校生活が“重く”感じるのか?
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処理速度が低い場合 → 課題をこなすスピードが遅く、周囲との差に疲れやすい
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感覚過敏やストレス耐性の低さ → 集団生活がしんどい
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柔軟性の弱さ → 教科ごとのルール変更に混乱
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“理解できる”けど“こなせない” → 知的な理解と実行力のズレに疲弊
■薬との向き合い方——「補助輪としての役割」
先生は薬についてこう説明しました。
「少しだけ薬を使って、“困っていること”を減らしましょう。
でもこれは一生続くものではなく、体から“もういらない”という合図が出るまでの補助輪です」
この言葉に、私はとても救われました。
■まとめ:小学生まではフォローできた。でも中学生では“支援の形”を変える必要があった
小学校のころまでは、息子の気持ちを私が言語化し、代弁してサポートできていました。
でも中学生になって、思春期の自立も始まり、親子の距離も変わっていきます。
そのタイミングで、医師や薬という外部支援が必要になったのだと思います。
「発達障害傾向がある子はゲームにハマりやすい」とよく言われます。
でも、その背景には**“没頭しやすい特性”と環境のミスマッチ**があります。
そのとき、「制限する」「ルールを守らせる」だけでは限界がある。
医師や薬という選択肢も含めて、その子に合った支援を選ぶことが大切だと、今は思っています。